会長の今昔話

茶の火入れ 極意

全自動乾燥火入れ機

 

茶の葉というのは大変特殊な植物です。

樹から摘み取った生の茶葉は、そのまま乾燥してもお茶としての香味は全く無く、色のついた白湯(さゆ)でしかありません。

茶は荒茶加工、仕上加工という工程を経て美味しくなっていきます。

荒茶つまり粗製茶の造り方は、まず摘まれた生の葉に蒸気をあてて酸化酵素を止め、その後、ローリング、プレッシングなど力と熱を加えながら、葉の組織を壊していきます。

出来上がった荒茶は、野菜の惣菜に例えるなら、茹でただけの菜っ葉と同じ。

茹でた菜っ葉は調理師が煮たり味をつけたりして、料理として完成します。

お茶も同じこと、荒茶に仕上加工を施すことで、茶として完成します。

この仕上加工が腕の見せ所、各問屋が専門の技術により茶を造り上げていくのですが、最も大事なことは、如何に香味成分を引き出していくか…茶の火入の極意であります。

小生も就中(なかんずく)最高の火入加工を求めて、苦心惨憺(さんたん)してまいりました。

お茶の火入方法というのはコーヒーの焙煎のように単純なものではありません。

熱と力を加えることで茶の中の諸成分(タンニン酸、カフェイン、アミノ酸類)が酵素の働きにより変化し、香味を際立たせ、特徴のある銘茶を作っていきます。

これらを踏まえ、各製茶機メーカーが次の様な火入機を考案しておりますが、それぞれに一長一短があり、満足のいく機械はありません。

1、熱風火入機 機械の中にベルトコンベアを走らせ、下部より透気させる(熱風をあてて乾燥させる)火入法

2、ドラム式火入機 ドラム缶を2~3本横に並べ回転により茶葉を送り、下部よりラインバーナーでドラムを暖める、いわば直火法

3、遠赤外線火入機 熱源は電気、或いはガスでもよろしく、出た熱をカーボンフィルターを通し遠赤外線を作り茶に照射する、いわば炭火焼と同じ効果

 4、マイクロ波火入機 茶の葉をベルトコンベアで送りながら、これにマイクロ波を照射し火入を行う、電子レンジと同じ法

これらの火入機が主としてありますが、満足のいくものは見当たりません。

その中でも古くよりオーソドックスに使用されているドラム式火入機が、希望するものに一番近かったため、この機械の研究に数年を費やしました。

先ず何の素材がドラムに最適かを調べました。鉄を筆頭にアルミニウム・銅・ステンレス・鋳物、真鍮、種々の素材で試験をした結果、1番…鋳物 2番…鉄 3番…ステンレス 4番…銅 5番…真鍮 6番…アルミニウムとなりました。

金属の種類により、何故この様な差が生じるのか調査した処、1番の鋳物には鋳造の際カーボンを入れ、これにより遠赤外線を発する事が判明、遠赤外線の効果がお茶の火入に役立つ事が解りました。

それならばとカーボンドラムを作ってみましたが、これがまた非常に高価であり、鉄と比較し熱伝導が悪く成功しませんでした。

加工のしやすさ、価格、熱伝導などを考慮、鉄の素材が一番であると結論、以後の開発は鉄板で行うこととしました。次に問題となったのは熱の伝わり方です。

直径90㎝、長さ240㎝のドラムの中でお茶を均一に送る手段として、内面にスパイラル(流れを均一誘導する螺旋状の仕切り板)を設けました。

ドラムの底辺に外側よりラインバーナーで加熱し熱の伝わり具合を測定した処、240㎝のラインバーナーの炎の大きさは均一であっても、ドラム内の温度は大変な差異が発見されました。

茶の火入れ ドラム図

即ち、ドラムの両端の温度を100℃に調整すると両端より50㎝内側の温度は115℃となり、更に50㎝内側の温度は130℃となり、残されたドラムの中央部分40㎝は実に150℃まで上昇、ドラムの熱は中央に向って集熱することが判明しました。

これでは長いドラムの使用価値は全くありません。熱の均一化を設ける為にラインバーナーを80㎝ずつ3つに区切り、それぞれに温度センサーを取り付けました。

各箇所一定の温度に達すると炎の大きさが自然に調整できるガスの自動調整弁を設け、240㎝のドラムが常に一定の温度となる装置を取り付けました。

温度のムラを無くす事で均一に茶葉の芯より火が入る事に成功しました。

さらに、より香ばしさを追求するため遠赤外線に注目しました。

遠赤外線の炎が食べ物にどの様な効果があるかは、食べ物の炭火焼の美味しさが立証しております。

ガスの炎をカーボンタイルに通過させることにより遠赤外線を作り、鉄のドラムに熱伝導をさせ、遠赤外線の効果を十分に出せる火入方法に成功致しました。

お茶と云うのは籠上(荒い部分)籠下(細かい部分)では熱の伝わり方が違います。

必ずお茶を籠上、籠下と2分割し、それぞれに適した温度とドラムの中の滞留時間の調整を計ります。

また、火入の折、特に注意を要するのは、冷蔵庫に保管していたお茶を火入れすることです。

冷たいまま火入をすると表面だけ火が入り黒くなってしまうため絶対禁物です。

必ず常温に戻してから火入することが重要です。

火入れ後の処理も大切です。

火入機を通したお茶は110℃以上の高温となっている為、これをすぐ箱取り等してしまうと熱によりお茶が蒸れてしまうので、必ず冷風にて短時間に冷ますことも重要なポイントです。

この様に細部にまたがり心配りをすること、その結晶が最高の火入技術という事になります。

これが、絶品の香り高いお茶造りの秘訣なのです。



会長の今昔話」の記事一覧に戻る